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ロサイ・ドルフマン・デストンブ病ってどんな病気?Ver.1 2025/1

ロサイ-ドルフマン病(Rosai-Dorfman-Destombes disease:RDD)
Frequently Asked Questions(FAQ)

はじめに

ロサイ-ドルフマン病(Rosai-Dorfman disease: RDD)は、まれな「炎症性⾻髄腫瘍」(「組織球症ってなに?」を参照)です。1965年にDestombesが⾸のリンパ節の脹れと副⿐腔炎のある患者さんの病変を顕微鏡で視て報告したのが最初で、1969年にRosaiとDorfmanが同じ特徴のある患者さんをまとめ、この病気が知られるようになりました。なので、ロサイ・ドルフマン・デストンブ病(Rosai-Dorfman-Destombes disease)とも呼ばれます。

また、この病気の特徴を表した、「巨⼤リンパ節腫脹を伴う洞組織球症(Sinus Histiocytosiswith Massive Lymphadenopathy:SHML)」という病名で呼ばれることもあります。WHO分類で「組織球性腫瘍および樹状細胞性腫瘍」に分類されています。
RDDは20歳前後の⿊⼈に多く、⽶国では、患者さんの数は20万⼈1⼈ほどで年間100例ほどが新たに診断されると⾔われています。⽇本では、患者さんは少なく新たに診断される患者さんの数は年間に10例以下と考えられます。

ロサイ・ドルフマン病(Rosai-Dorfman-Destombes disease:RDD)については、組織球症ねっとのロサイ・ドルフマン病のページ(現在作成中)も参照してください。

原因は何ですか?

図1.RDD細胞における遺伝子変異の頻度図1.RDD細胞における遺伝子変異の頻度

LCHと同様に、⾻髄の造⾎前駆細胞(⽩⾎球や⾚⾎球、⾎⼩板の元になる細胞)に遺伝⼦変異が⼊り異常な組織球ができてしまうことが原因の⼀つと考えられ、約半数の患者さんに遺伝⼦変異が⾒つかります。変異の⼊る遺伝⼦は、MAPキナーゼ経路(「組織球症ってなに?」を参照)のRASとMEK1(MAP2K1と同義)が多くを占めます(図1)。

⾃⼰免疫疾患(免疫の攻撃が⾃分に向いてしまう病気:全⾝性ループスエリテマドーデスなど)やリンパ腫、遺伝的な免疫疾患、リンパ腫などに合併することもあります。

病型とその特徴

リンパ節型

RDDの60%がこのタイプです。両側の⾸のリンパ節が腫れるのが特徴です。通常、痛みはありません。脇の下や⾜の付け根、胸の中のリンパ節が腫れることもあります。発熱や寝汗・体重減少を伴うことがあります。あちこちのリンパ節が腫れている場合には治りが悪いです。

リンパ節外型

RDDの40%がこのタイプです。⽪膚、⿐腔、眼窩の病変が10%ほど、⾻の病変が5-10%ほど、脳や脊髄の病変が5%ほど、腎臓の病変が4%ほど、肺の病変が2%ほど、胃腸の病変が1%ほどの患者さんにみられます。20%の患者さんには、複数の臓器に病変があり、病変のある臓器の数が多いと治りが悪くなります。

⽪膚の病変

痛みや痒みのない、⻩⾊や⾚⾊・茶⾊の結節や丘疹がゆっくりと⼤きくなります。体のどこにでもでき、複数みられることが多いです。リンパ節やほかの臓器の病変を伴わないことがほとんどです。

⿐腔の病変

腫瘤によって⿐づまりや⿐⾎、⿐の変形がみられます。リンパ節病変を伴うことが多いです。リンパ節病変を伴うことが多いです。

眼の病変

まぶたや結膜や涙腺、⾓膜などに腫瘤ができます。リンパ節病変を伴うことがあります。

⾻の病変

⾻が溶けて、⾻の痛みや⾻折がみられます。リンパ節病変を伴うことが多いです。

脳や脊髄の病変

頭痛やけいれん、⼿⾜のまひがおこります。脳や脊髄を包む硬膜から腫瘤が⽣じることが多いです。リンパ節病変を伴うことはまれです。

腎臓の病変

腫瘤ができたり腫れたりして⾎尿や蛋⽩尿が⽣じます。リンパ節病変を伴うことがあります。

肺の病変

間質性肺炎や結節、胸⽔によって乾いた咳や呼吸困難が⽣じます。リンパ節病変を伴うことがほとんどです。

胃腸の病変

盲腸や⼤腸が腫れて腹痛や便秘、⾎便が⽣じます。リンパ節病変を伴うことがほとんどです。

表1.病変部位と特徴

病型 病変部位 症状 リンパ節病変合併 治りやすさ
リンパ節型(60%) リンパ節 両側の⾸のリンパ節の痛みのない腫れ胸の中・脇・⾜の付け根のリンパ節が腫れることもある発熱・寝汗・体重減少を伴うことが多い ⾃然に治ることあり病変が多いと治りにくい
節外型 (40%)半数に多臓器病変 ⽪膚(10%) 痛みや痒みのないブツブツ複数できることが多い まれ 自然軽快あり
⿐腔/副⿐腔(10%) ⿐づまり、⿐⾎、⿐の変形 しばしば 治りやすい
眼(10%) まぶた、結膜、涙腺、⾓膜などの腫瘤 ときどき 治りやすい
⾻(5%) ⾻が溶けて、⼿⾜の⾻や背⾻に痛み しばしば 治りやすい
脳/脊髄(5%) 頭痛、けいれん、⼿⾜のまひ硬膜から病変が⽣じることが多い まれ ⼿術で採れれば治る
腎(4%) 血尿、蛋白尿 ときどき 死亡率約40%
肺(2%) 咳、呼吸困難 ほとんど 死亡率約45%
消化管(1%) 腹痛、便秘、血便 ほとんど 死亡率約20%

診断と検査

病変を⾒つけるには、CTやMRI検査が有⽤で、FDG-PET/CT検査を⾏うこともあります。
⾎液検査では、⽩⾎球増多や炎症反応(CRP上昇や⾚沈亢進)、γ-グロブリン⾼値が⾒られます。
診断は、症状や検査や画像の所⾒、さらに病変の⼀部を採って顕微鏡でみる病理検査によりなされます。リンパ節は著しく腫⼤し、すごく拡張したリンパ洞内にS100・CD14・CD68・CD163陽性、CD1a・CD207(ランゲリン)陰性の⼤型の組織球を多数認め、組織球の細胞質内に無傷のリンパ球などを取り込む細胞内細胞貫⼊現象(emperipolesis)が散⾒されれば、診断は確定します。

治療

病変の数が少ないリンパ節型や、⽪膚病変のみの場合には、無治療で⾃然によくなることがあります。多臓器病変がある例は、副腎⽪質ステロイド療法や抗がん剤治療(ビンブラスチン/メソトレキセートやクラドリビン、クロファラビンなど)を⾏います。脳の腫瘤は可能なら⼿術で取り除きます。70%くらいの患者さんは症状が改善しますが、⻑期間にわたって症状の悪化と軽快を繰り返すこともあります。このような患者さんには、変異している遺伝⼦の働きを抑える分⼦標的療法が期待されます。⽇本では2023年に保険承認された「標準的な治療が困難なBRAF遺伝⼦変異を有する進⾏・再発の組織球症にBRAF阻害薬であるダブラフェニブ(dabrafenib)とMEK阻害薬であるトラメチニブ(trametinib)の併⽤療法」がました。ステロイドや抗がん剤治療に反応しないBRAFV600E変異のある患者さんには、この分⼦標的療法の有効性が期待できます。BRAFV600E変異はRDD患者さんの中ではかなり少ない(5%未満)ので、その恩恵を受ける患者さんは少数と思われます。RAS変異やMEK1変異のある患者さんは、MEK阻害剤による分⼦標的療法が試みられます(保険適応外)。多臓器病変、特に肺や腎・消化管・肝病変のある例は命にかかわることがあります。全体でみると10%前後の患者さんが亡くなります。

もっと知りたい方への参考文献

  • 佐藤亜紀, 坂本謙⼀, 森本 哲. 【⾎液症候群(第 3 版)-その他の⾎液疾患を含めて-】リンパ系の腫瘍 組織球性疾患 腫瘍性組織球症 その他の組織球症(若年性⻩⾊⾁芽腫症, エルドハイム・チェスター病, Rosai-Dorfman-Destombes病などの non-LCH). ⽇本臨床. 2024: 別冊⾎液症候群 IV: 480-485.
  • Abla O, Jacobsen E, Picarsic J, et al. Consensus recommendations for the diagnosis and clinical management of Rosai-Dorfman-Destombes disease. Blood. 2018; 131: 2877-2890.
  • Bruce-Brand C, Schneider JW, Schubert P. Rosai-Dorfman disease: an overview. J Clin Pathol. 2020 ;73: 697-705.
  • Goyal G, Ravindran A, Young JR, et al. Clinicopathological features, treatment approaches, and outcomes in Rosai-Dorfman disease. Haematologica. 2020; 105: 348-357.
  • Younes IE, Sokol L, Zhang L. Rosai-Dorfman Disease between Proliferation and Neoplasia. Cancers (Basel). 2022; 14: 5271.

AMED ⾰新的がん医療実⽤化研究事業「組織球症の標準治療確⽴を⽬的としたレジストリおよびバイオレポジトリの構築」佐藤班