組織球症ってなに?Ver.1 2025/1
組織球症は2つに分けられる
組織球症(histiocytosis)は、組織球という白血球の一種が異常に臓器に蓄積する病気の総称です。 組織球にはマクロファージや樹状細胞などいくつかの種類がありますが、体内に侵入してきた異物や病原体・死んだ細胞を 貪食 (食べて分解除去)したり、リンパ球に抗原提示(異物や病原体の情報を伝達)したりするのが本来の役割です。組織球症は大きく2つに分けられます(図1)。
図1.組織球症には大きく分けて2つあるここで取り扱うのは組織球性/樹状細胞性腫瘍
遺伝子に変異(設計図に傷)が入った組織球、つまり腫瘍性の組織球がたまって、他の好中球や好酸球などの炎症細胞と相まって臓器を傷める「組織球性/樹状細胞性腫瘍」(histiocytic/dendritic cell neoplasms)と、Tリンパ球の異常などに伴って炎症性サイトカイン(免疫細胞を刺激するホルモンのようなもの:インターフェロンやインターロイキンなど)が過剰に出ることによってマクロファージが異常に活性化し、さまざまなものを貪食し臓器を傷つける血球貪食性リンパ組織球症(Hemophagocytic LymphoHistiocytosis:HLH)があります。ここで取り扱うのは「組織球性/樹状細胞性腫瘍」のほうです。
骨髄(骨の中)にいる造血前駆細胞(白血球や赤血球、血小板の元になる細胞)に遺伝子変異が入り、本来の働きをしない組織球、つまり腫瘍の性質をもった組織球が作られ、臓器にたまり、好中球や好酸球などと伴に炎症を起こして臓器を傷めるので、「炎症性骨髄腫瘍」とも呼ばれます。
「組織球性/樹状細胞性腫瘍」にはいくつかの疾患が含まれる
組織球性/樹状細胞性腫瘍の中で最も頻度が高いのは、乳幼児に多いランゲルハンス細胞組織球症(Langerhans Cell Histiocytosis:LCH)。次いで、乳児に多い黄色肉芽腫(Juvenile XanthoGranuloma: JXG)、中高年に多いエルドハイム・チェスター病(Erdheim-Chester disease:ECD)、若年成人に多いロサイ・ドルフマン・デストンブ病(Rosai-Dorfman-Destombes disease:RDD)、他の血液腫瘍を合併することが多い不確定樹状細胞組織球症(Indeterminate Dendritic Cell Histiocytosis: IDCH)、非常に死亡率が高い悪性組織球性腫瘍(Malignant Histiocytic Neoplasms: MHN)、2つ以上の組織球性腫瘍を合併する混合性組織球性腫瘍(Mixed Histiocytosis: MH)などがあります。 LCH以外の組織球性/樹状細胞性腫瘍をまとめて non-LCH と呼ぶことがあります(表1)。
表1. 主な組織球性/樹状細胞性腫瘍の特徴
| 疾患名 | 好発年齢 | 病変/症状・特徴 |
|---|---|---|
| ランゲルハンス細胞組織球症(LCH) | 主に乳幼児(成人にも) | 溶骨、皮疹、リンパ節腫脹、肝脾腫、尿崩症など |
| 黄色肉芽腫(XG) | 乳児(成人にも) | 皮疹、眼・肺・肝臓・頭蓋内病変など |
| エルドハイム・チェスター病(ECD) | 中高年 | 両側脛の骨硬化、心臓・大血管・腎周囲の線維化病変など |
| ロサイ・ドルフマン・デストンブ病 | 主に若年成人 | 両側頸部のリンパ節腫脹、皮膚・骨・副鼻腔・眼窩病変など |
| 不確定樹状細胞組織球症(IDCH) | 中高年 | 皮疹病変が主、他の血液腫瘍を合併することが多い |
| 悪性組織球性腫瘍(MHN) | 主に成人 | リンパ節腫脹、脾腫、皮膚・肺・肝臓病変など、死亡率高い |
| 混合性組織球性腫瘍(MH) | 主に成人 | LCH+ECDが最も多く、次いでECD+RDD |
図2.組織球性/樹状細胞性腫瘍これらの組織球性/樹状細胞性腫瘍のほとんどで、CSF1Rなどのチロシンキナーゼ受容体、RASやSYKといった下流の細胞質内蛋白、さらに下流のMAPキナーゼ経路やPI3K経路の遺伝子に変異がみられます(図2)。
MAPキナーゼ経路やPI3K経路とは、細胞が外から受けた信号を核に伝える仕組みです。細胞外からの信号が核に伝わることによって、細胞は増えたり、死ににくくなったり、性質を変えたり、信号を発したりします。 遺伝子に変異が入っていると、この経路が常にスイッチオンになり、それによって細胞は腫瘍化してしまいます。
もっと知りたい方への参考文献
- 東條有伸. Molecular Mechanism of Inflammation and Tumor in Histiocytic Disorders 組織球症の概要. 臨床血液. 2022; 63: 363-367.
- 東條有伸. 【希少がんーがん診療の新たな課題-】希少がん疾患各論 血液の腫瘍 組織球・樹状細胞腫瘍. 日本臨床. 2021; 79 増刊1 希少がん; 574-578.
- Khoury JD, Solary E, Abla O, et al. The 5th edition of the WHO Classification of Haematolymphoid Tumours: Myeloid and Histiocytic/Dendritic Neoplasms. Leukemia. 2022; 36: 1703-1719.
AMED ⾰新的がん医療実⽤化研究事業「組織球症の標準治療確⽴を⽬的としたレジストリおよびバイオレポジトリの構築」佐藤班

