最新学術情報
第75回 最新学術情報
1)「小児期にLCHを経験した患者の生活の質、疲労、抑うつ、注意欠陥、疼痛」
Quality of life, fatigue, depression, attention deficits, and pain after childhood Langerhans cell histiocytosis.
Sveijer M, et al. Blood Neoplasia. 2025 Apr 3;2(3):100098.
LCHは炎症性骨髄腫瘍であり、臨床症状は多岐にわたり、自然治癒する単一病変から多臓器型で致死的となる可能性のある疾患まで様々である。進行性の中枢神経変性症などの長期的な後遺症がよく見られる。LCHが日常生活に長期的な影響を与えるかどうかを、1990年~2014年の間にストックホルムで小児期にLCHと診断され、診断後5年以上経過した10歳以上のすべての症例を対象に、横断的郵送調査により検討した。対象者61例中32例(52%)から、健康関連の生活の質、疲労、疼痛、うつ病、注意欠陥を評価する質問票の回答を得た。診断後の期間の中央値は19.4年であった。全体では、32例中14例 (44%) が多臓器型、うち4例(12%)はリスク臓器浸潤陽性、32例中17例(53%)は全身治療を受けていた。5例(16%)は中枢神経に病変があり、全例が中枢神経変性症を伴っていた。健康関連の生活の質の平均合計スコアは78.8、疲労の平均合計スコアは68.7 (小児QOL質問票) であった。5例(16%)が神経発達障害の診断を受けていた。15歳以上の患者では、42%に長期にわたる疼痛を、27%に抑うつを示すスコアを認めた。健康関連の生活の質の低下は、疲労、抑うつ症状、注意欠陥と相関していた。単一臓器型の患者と、全身治療期間が最も長かった多臓器型の患者は、健康関連の生活の質が最も良好であった。結論として、小児期にLCHを経験した患者には、長期的に疲労、持続性疼痛、抑うつ、注意欠陥の症状が高頻度に認め、これらは生活の質の低下と関連しており、フォローアップで評価すべきである。また、治療期間の延長が長期的な影響を軽減し、生活の質にプラスの影響を与えるかどうかについて検討すべきである。
2)「骨原発Rosai-Dorfman病:臨床病理学的特徴およびIgG4関連疾患と関連する可能性の評価」
Primary intraosseous Rosai-Dorfman disease: Clinicopathological features and an assessment of a possible relationship with IgG4-related disease.
Shi J, et al. Ann Diagn Pathol. 2025 Apr;75:152435.
Rosai-Dorfman病(RDD)は、まれな組織球増殖性疾患であり、骨原発性孤発性RDDは極めてまれである。一部のRDDでは、免疫グロブリンG4(IgG4)陽性形質細胞の浸潤が増加し、IgG4関連疾患に類似した組織病理学的特徴を示すことがある。しかし、RDDとIgG4関連疾患との関連性は未だ明らかではない。そこで本研究では、骨原発RDDとIgG4関連疾患との関連性を検討することを目的とした。11例の骨原発RDDのデータを収集し、それらの臨床病理学的特徴をまとめ、IgG4関連疾患との関連性を検討した。最も多かった部位は長管骨で、次いで脊椎であった。この中国人コホートでは、文献で報告されている欧米の患者と比較して、発症年齢は高く、平均39.2歳、中央値34歳であった。硬化性変化は7例で認められ、車軸状配列は1例のみにみられた。血管閉塞性静脈炎はいずれの症例にも認めなかった。IgG4陽性形質細胞数は、高倍率視野あたり5~50個で、IgG4/IgG比は5~25%であった。骨原発RDDは線維化やIgG4陽性形質細胞の浸潤を示すことがあるが、IgG4関連疾患の基準を満たさない。結論として、RDDはIgG4関連疾患のスペクトルに属さないと考えられる。
3)「組織球症関連神経変性におけるクローン性炎症性ミクログリアの役割」
Role of clonal inflammatory microglia in histiocytosis-associated neurodegeneration.
Vicario R, et al. Neuron. 2025 Apr 2;113(7):1065-1081.e13.
LCHおよびErdheim-Chester病(ECD)は、MAPキナーゼ活性化変異を伴うクローン性骨髄疾患であり、神経変性症を発症するリスクがある。LCHおよびECDの患者において、神経変性の臨床症状の有無にかかわらず、ミクログリアの変異クローンが存在し、菱脳の灰白質核に優位にミクログリア増殖、アストロサイト増殖、神経細胞喪失を伴うことを見出した。疾患の経過が最も長かった患者において、神経症状はPU.1陽性クローンの細胞数と関連しており(p = 0.0003)、このことは潜在的な神経変性の初期段階があることを示唆している。遺伝子バーコーディング解析から、クローンは、患者によって骨髄造血または卵黄嚢造血に由来する可能性があることが示唆された。マウスモデルでは、病勢は局所的なクローン増殖に関連しており、CSF1R阻害剤によりミクログリアを減少させると神経細胞喪失は抑制され、生存率は改善した。これらの研究は、神経変性は炎症性ミクログリアのクローン性増殖に関連していることを示している。臨床症状が出現するまでに長い経過があり、不可逆的なニューロン枯渇に至る前に治療介入する機会があることを示している。
4)「成人における単発性および多発性黄色肉芽腫:単一施設における後方視的コホート研究」
Solitary and multiple xanthogranulomas in adult patients: a single-center retrospective cohort study.
Kwan M, et al. Arch Dermatol Res. 2025 Apr 1;317(1):660.
黄色肉芽腫(XG)は、Non-LCHの中で最も多い病型であるが、成人において全身病変との関連に関して十分に解明されていない。本研究では、XGと診断された成人患者を後方視的に解析し、臨床的特徴および全身病変について分析した。138例(平均年齢43.3歳、女性51.4%、白人76.8%)において、成人XGの病変は体幹部に最も多く(40.6%)、小児での好発部位である頭頸部とは異なっていた。多発性XGを呈した例(3.6%)は、全身性悪性腫瘍(p=0.009)、特に血液悪性腫瘍(p=0.001)、および非悪性血液疾患(p=0.027)の合併率が有意に高かった。高脂血症(37%)、心疾患(51.4%)、内分泌疾患(31.2%)が、最も多くみられた併存全身疾患であった。結論として、成人の多発性XGは、悪性腫瘍(特に血液悪性腫瘍)および非悪性血液疾患を合併することが多く、免疫調節異常との関連性が示唆された。また、多発性XGと慢性骨髄単球性白血病から急性骨髄性白血病へと進行した1例の遺伝子変異解析では、XG病変および骨髄細胞の両方に同一のKMT2a遺伝子欠失を認め、一部の症例では同一クローンに起因する可能性が示唆された。
5)「小児LCHにおける可溶性IL-2受容体値の臨床的影響」
The clinical impact of serum soluble CD25 levels in children with Langerhans cell histiocytosis.
Zhao ZJ, et al. J Pediatr (Rio J). 2025 Mar-Apr;101(2):194-201.
【目的】LCHは、炎症性特徴を有する稀な骨髄腫瘍である。本研究は、小児LCHにおける可溶性IL-2受容体(sIL-2R)値と臨床的特徴や予後との関連を分析することを目的とした。【方法】18歳未満のLCH 370例を対象に、ELISA法を用いて血清sIL-2R値を測定した。治療レジメンの違いによって患者を2つのコホートに分けた。さらに、テストコホートにおいて、sIL-2R値が予後予測因子となるかを評価し、独立した検証コホートにおいてそれを検証した。【結果】診断時の血清sIL-2Rは中央値3,908 pg/ml(範囲:231~44,000 pg/ml)であった。リスク臓器陽性多臓器型(MS RO+)では、単一臓器型(SS)と比較して、sIL-2R値は有意に高かった(p<0.001)。sIL-2R値が高かった例は、リスク臓器、皮膚、肺、リンパ節、下垂体病変が多かった(すべてp<0.05)。sIL-2R値によって、LCHの病変進行/再発を予測することができ、ROC曲線下面積は60.6%であった。最適カットオフ値は2,921 pg/mlであった。sIL-2R高値群は、sIL-2R低値群と比較して、無増悪生存期間が有意に短かった(p<0.05)。【結論】初回診断時の血清 sIL-2Rの高値は、高リスクの臨床的特徴および予後不良と関連していた。sIL-2R値によって、第一選択化学療法後の進行/再発の予測が可能である。
6)「Erdheim-Chester病の神経症状とその管理:スコープレビュー」
Neurological manifestations of Erdheim-Chester disease and their management: A scoping review.
Qazi MS, et al. Medicine (Baltimore). 2025 Mar 21;104(12):e41932.
【背景】Erdheim-Chester病(ECD)は、様々な臓器における、組織球、特に線維化組織に取り囲まれた泡沫状組織球の過剰な産生と蓄積を特徴とする疾患である。ECDでは、長管骨、皮膚、肺、脳、心臓、その他の組織や臓器に病変が生じる可能性がある。【方法】2024年2月、主要データベースを用いて2021年~2024年に発表された研究を徹底的に文献検索した。キーワードとして「ECD CNS」、「ECD Neuro」、「Erdheim Chester Disease CNS」、「histiocytosis」、「Erdheim Chester Disease Neurology」などを用いた。まず461件の論文を抽出し、その後、英語フィルターと抄録分析によって29件の論文に絞り込んだ。最終的に、16件の論文を、神経症状を伴うECDに関するレビューの対象とした。【結果】主な臨床所見は、運動失調、頭蓋神経障害、認知障害であった。組織病理学的検査では、症例の88%にCD68陽性組織球の浸潤が認め、50%にBRAF遺伝子変異を認め、83.3%に腫瘤形成を認めた。最も多く行われていた治療法はベムラフェニブで、次いでステロイド、手術、化学療法であった。その結果、死亡率は15.78%、病状進行は26.31%、改善または安定化は31.57%であった。ほとんどの症例でステロイドは無効であったが、ベムラフェニブと放射線療法は一部の症例で有効であった。【結論】本疾患の早期診断は、致死的な経過をたどることを防ぐための適切な介入に不可欠である。ベムラフェニブは、他の薬剤と比較して、本疾患に対する有効性が証明された唯一の薬剤であった。本研究は、ECDの神経病変に関する貴重な知見を提示し、この複雑な疾患に対する包括的な管理の必要性を明らかにしている。
7)「LCH患者における骨病変の特徴と放射線学的特徴:症例シリーズ研究」
Characteristics and radiological features of bone lesions in patients with Langerhans cell histiocytosis: A case series study.
Yang T, et al. Medicine (Baltimore). 2025 Mar 14;104(11):e41833.
本研究は、LCH患者における骨病変の特徴と放射線学的特徴を調査することを目的とした。本研究は、2010年1月~2020年12月の浙江大学医学部第二付属病院におけるLCH症例を対象とした。計126例の141病変が対象となった。141病変中、頭蓋顔面骨(24病変、17.02%)、体幹骨(40病変、28.37%)、四肢骨(41病変、29.08%)、椎骨(36病変、25.53%)が多い病変部位であった。X線検査では、110病変中84病変で骨髄腔または海綿骨内に溶骨性病変を認めた。CT検査では、141例中17例で境界不明瞭な病変を認めた。MRI検査では、127病変中48病変で不均一な高信号を示した。SPECT検査では、113例中97例で集積を認め、113例中8例で多発病変を認め、計106個の病変が確認された。PET-CT、PET陽性の単一病変が21個確認された。LCHの骨病変は、四肢骨、体幹骨、椎骨に認められる。LCH患者の骨病変の放射線学的特徴は複雑かつ多様である。病変の完全な検出と特徴づけには、X線、CT、MRI、SPECT、PET-CTなどを組み合わせる必要があるかもしれない。
8)「小児LCHの血液学的病変:重症度はBRAFV600Eコピー量に関連する」
Childhood Langerhans cell histiocytosis hematological involvement: severity associated with BRAFV600E loads.
Thalhammer J, et al. Blood. 2025 Mar 6;145(10):1061-1073.
LCHにおいて造血器病変は生命を脅かすリスク臓器病変の1つである。造血器病変は、1975年以降、Laheyの基準によって、ヘモグロビン値<10g/dLおよび/または血小板数<10万/μL、白血球数<4000/μL、好中球数<1500/μLと定義されている。フランス国立組織球症登録に1983~2023年に登録された18歳未満の2,313例のうち、331例に造血器病変を認め(診断時年齢は中央値1歳)、追跡期間は中央値8.1年であった。骨髄穿刺の塗抹標本および生検では、反応性の組織球増多や血球貪食像、骨髄線維症を認めることがあるが、これらで造血器病変の診断が確定することはない。58例(17%)がマクロファージ活性化症候群を発症しており、急性のEBウイルスやサイトメガロウイルス感染に関連していたり、典型的なLCH症状が現れる数か月前に発症していたりしていた。造血器病変は、輸血を開始するためのヘモグロビン値および血小板数の閾値(それぞれ≤7g/dLおよび≤2万/μL))によって、軽度造血器病変と重度造血器病変の2群に正確に分けられそうである。この2群では、臓器病変、検査値、変異遺伝子、血中BRAFV600Eコピー数、薬剤感受性、転帰(10年生存率は軽度造血器病変98%、重度造血器病変73%)が異なった。死亡率は1998年以降にクラドリビンとシタラビンの併用療法で低下し、2014年以降はMAPK阻害剤で低下した。41例(12%)が神経変性症を発生し、長期生存者のリスクとして浮上した。これらの結果は、重度造血器病変は、LCHのほぼすべての医学的合併症を網羅しており、リスク臓器となる造血器病変の定義を重度造血器病変に限定すべきであることを示唆している。今後の臨床試験によって、重度造血器病変のある患者には標的療法アプローチがより適している一方、軽度造血器病変の患者は従来の治療法で管理できることが実証される可能性がある。
9)「組織球性腫瘍患者における不安と抑うつ、関連する臨床的特徴」
Anxiety and Depression in Patients with Histiocytic Neoplasms and their Associated Clinical Features.
Reiner AS, et al. Blood Adv. 2025 Mar 25;9(6):1376-1386.
不安や抑うつは多くのがん患者でよく見られるが、組織球性腫瘍 (HN)では体系的に研究されていない。私たちは、HN 患者の不安と抑うつの発生率を推定し、不安と抑うつに関連する臨床的特徴と患者報告アウトカム (PRO) を明らかにしようとした。2018年~2023年に、病院不安抑うつ尺度 (HADS) を含む PRO を提出した HN 患者レジストリのコホートを対象とした。中等度または重度の不安または抑うつは、それぞれ HADS の不安または抑うつスケールのスコアが 11以上と定義した。他の検証済みの PRO を含む要因と中等度または重度の不安または抑うつとの関連を、ロジスティック回帰モデルで検討し、オッズ比 (OR) と 95% 信頼区間 (CI) を推定した。215例のうち、約3例に1例が不安または抑うつの基準を満たし、7例に1例が中等度または重度の不安または抑うつの基準を満たした。これらの率は、12か月間の経過にわたって変わらなかった。抑うつの発生率は、不安とは異なり、HN の病型間で有意な差があり、Erdheim-Chester病で最も高かった。さらに、中枢神経病変、失業、長期間の診断未確定は、抑うつを有意に増加させた。経済的負担、経済的不安、疾患に伴う重度の症状は、不安と抑うつの両方を増加させた。逆に、全般的および認知的健康関連 QOL(HRQoL)の向上は、不安と抑うつの両方を減少させた。HN 患者は、不安と抑うつをしばしば伴い、長期間持続し、経済的負担、症状の重症度、HRQoLと関連している。
10)「Erdheim-Chester病(ECD)におけるアルギニンバソプレシン欠乏症(中枢性尿崩症)に関連する臨床所見、検査所見、画像所見」
Clinical, Laboratory, and Imaging Features Associated with Arginine Vasopressin Deficiency (Central Diabetes Insipidus) in Erdheim-Chester Disease (ECD).
Vaid S, et al. Cancers (Basel). 2025 Feb 27;17(5):824.
【目的】Erdheim-Chester病(ECD)は、MAPK経路、特にBRAF遺伝子の活性化変異を伴うL群組織球症である。本研究では、ECDで最もよくみられる内分泌疾患の一つであるアルギニンバソプレシン欠乏症(AVP-D)の有病率、遺伝子変異、生化学的検査所見、下垂体画像所見を解析した。【方法】61例のECDを対象とし、2011年1月~2018年12月に、遺伝子変異、生化学検査および下垂体内分泌機能検査の基礎値、下垂体MRI(またはCT)検査を含む横断的記述研究を行った。AVP-Dおよび下垂体前葉内分泌症(甲状腺機能低下症、性腺機能低下症、副腎機能不全、汎下垂体機能低下症)を評価した。解析には、Students t検定、ノンパラメトリック検定、Fisherの正確検定、およびロジスティック回帰を用いた。【結果】61例中22例(36%、男性19例、女性3例)にAVP-Dを認め、うち18例がデスモプレシンによる積極的な治療を受けていた。AVP-Dのある例はない患者に比べて、若年(50.00±10.45歳 vs. 56.72±10.45歳)で、BRAFV600E変異(68% vs. 43%)が多く、IGF-1(137.05±67.97 vs. 175.92±61.89 ng/mL)が低く、尿浸透圧(416.00 [250.00-690.00] vs. 644.50 [538.75-757.75] mOsm/kg)が低く、中枢性腺機能低下症(81.82% vs. 36.00%)・中枢性甲状腺機能低下症(23% vs. 2.5%)・汎下垂体機能低下症(41% vs. 0%)・下垂体前葉内分泌機能不全・下垂体後葉高輝度スポット欠損(63.64% vs. 20.51%)・下垂体画像異常が多かった。補正モデルでは、BRAFV600E変異 (オッズ比[95%信頼区間]: 7.38 [1.84-39.01])、中枢性腺機能低下症(6.193 [1.44-34.80])、原発性甲状腺機能低下症(13.89 [1.401-406.5])、下垂体後葉高輝度スポット欠損(12.84 [3.275-65.04])、下垂体画像異常(10.60 [2.844-48.29])がAVP-Dのオッズ上昇と関連していた。【結論】ECDではAVP-Dがよく見られ、下垂体内分泌障害、BRAFV600E変異、下垂体画像異常、下垂体後葉高輝度スポット欠損を伴っていた。

